鋭意製作中

8月に入りましたまだ完成していません。
今月こそ完成へ!

2011年1月31日月曜日

NDL Potsdam (13) - ステップ5終了、A-Deck(船首楼甲板)の工作

Bデッキに続き、ステップ5では船首Aデッキを工作します。ここは船首楼甲板、ドイツ語では
Backdeck
にあたります。

この甲板は、船の胴体側面の部材を除くと最も大きな部材でしょうか。ステップ4で作ったBデッキがこれによって隠されてしまいました。

船首楼甲板(Backdeck)

この甲板とその最も後ろのハウス前面の壁、それにあとでクレーンが載るガイドパイプ(?)が今回の工作物です。壁は窓は穴を空け、丁寧に作っていきます。甲板は、平面ではなく湾曲しています。キールと肋材に糊付けして接着していきますが、糊を付け過ぎて歪まないように気をつけました。


Aデッキ下のBデッキ

そしてこのAデッキが付いたことで、その下のBデッキが上からは見えなくなりました。サイドからは今も見えますが、この先、舷側が付くとさらに見えにくくなります。

ほとんど目につかなくなるところをこんなにも丁寧に作りましたのでかなり贅沢をしました。しかしこういうどうにか見えるような部分って模型では大事です。

ようやく見えるような部分がよく作り込んであると、見えないところもこれと同じレベルで作り込んでいるんだろうと、人間の目は誤解します。これは誤解ですが、模型の奥行きを出す上でとても重要です。見えるか見えないかの幽玄の世界が大事です。

2011年1月27日木曜日

NDL Potsdam (12) - ステップ4終了、もうすぐ見納めB甲板

これまでは主に構造部分の工作でしたが、ステップ4では初めて甲板部分を工作しました。

前回の躯体構造完成の際、一箇所だけ甲板が張られていました。そこはポツダム号ではB甲板と呼ばれる部分です。この部分はこの上に甲板が張られ次の工程ではトップからは隠されてしまいます。

この空間は繋船作業などに使うのかと思われますが、ステップ4はこの部分の工作です。


やや前方から見下ろしたのが上の写真です。ドアのある箱は階段室です。上部の甲板と繋がる階段が入るのでしょう。
中央の円柱は、マストの入るスペースです。その他、直径2 mmほどの円柱が4つありますが、これらも紙を丸めて作ります。

次は同じデッキを後方から見たところです。



柱は後ろ側に接合部があるのですが、切り取り線のラインがはっきりと残ってしまいましたのでラッカー系の塗料で白く塗って隠してあります。うっすらと線が残ってしまいましたが、このくらいで妥協しておきましょう。

このB甲板の上にA甲板がかぶさり、ポツダム号の場合はこの甲板が完全に陰になってしまいます。一方準姉妹船のシャルンホルスト号、グナイゼナウ号は、B甲板がこの船首部分で露出しています。そのためにこの二隻ではこの部分が谷のように一段低くなっているのですが、ポツダム号では船首はハウスまでデッキが平坦に連続しています。その結果、シャルンホルスト号とグナイゼナウ号では船体にダイナミックな印象を受けるのに対して、ポツダム号ではやや単調な、重い印象を受けます。

モデルは隠れてしまうこの甲板も細かな部分を忠実に再現しているようです。私も丸窓をポンチで穿ったり、円柱のシームを白く塗って隠したりと細かな部分まで作り込んでみました。

2011年1月24日月曜日

NDL Potsdam (11) - ステップ3終了、躯体構造の結合

週末の作業でステップ3の作業がほぼ終了しました。


上の写真は船尾部分の躯体構造です。糊が乾くまで、重りを載せて底板が歪まないようにしています。

この構造で特徴的なのは、船尾部分の入念な配置でしょうか。水平方向、垂直方向、いずれも小さな部分にいくつもの骨が入ります。前回の作品Stefan Batoryでは、船尾部分が尖ってしまってそこが気に入らなかったのですが、このキットでは船尾がきれいに丸くなるように配慮されているようですね。前作が400分の1、現在のキットが250分の1ですのでその違いとも言えますが、このキットの設計者であるラインホルト・ハーン(Reinhold Hahn)氏のこだわりなのかもしれません。

私だけでなく、クラシックな船のファンは船尾の丸みが好きだと言う人は多いようですが、この設計者の好みもそれに近いということでしょう。期待できます。


そしてこれまでステップ1と2で完成していた船首、胴体中央部分の躯体構造と今回の船尾部分のそれを結合しました。その結果が下の写真。


当然と言えば当然ですが、かなり大きい!
実際の船が193 mありますので250分の1の模型は77 cmあまり。置き場所が確保できないために帰国中の女房のデスクの上を拝借しています。これからの作業には全体が載る板でも調達しないといけなくなりました。

これで船体の全体像が見えてきましたが、喫水線の流線型のラインがかなり美しい。船首部分でラインが大きく中軸方向に抉れていますが、これが姉妹船(準姉妹船?、腹違い姉妹船?)シャルンホルスト号とグナイゼナウ号と違うポツダム号の特徴です。近代的な構造なのですが、当時としては巡洋艦や駆逐艦と言ったより高速の艦船を思わせる船形です。谷崎潤一郎が『細雪』の中で、ドイツの客船は軍艦のように尖っていると書いていると以前このブログで述べましたが、谷崎は神戸に寄港したこの船を見てそう言ったのかもしれません。早く舷側を貼って船体のイメージがよくわかるようにしたいものです。

2011年1月23日日曜日

NDL Potsdam (10) - 窓の桟はどんな色? とりあえず・・

ステップ3の作業は着々と進行していますが、やはり窓の桟がどんな色なのかはわかりません。手元にある本で写真を探したのですが、そんな細かいところまで写っている写真をありませんでしたし、しかも白黒なので今一つよくわかりません。

わからないのなら想像するより他に手がありません。まずは桟はペイントで表現することにして再びペンテルのHybrid Gelを何色か購入しました。


金(真鍮)
銀(ステンレス、アルミ)
茶(木材)
黒(鉄の表面が酸化して黒くなったもの)
を購入して、実際に桟を描いて試してみました。

あとは時代考証と自分の好みで選ぶことにしましょう。

時代考証といってもその当時の造船のことを知っているわけではありませんので、勝手な想像に過ぎませんが、当時ステンレスやアルミがそう大量に使われていたとは思いませんし、人の好みもあり、銀色に冷たく光る素材は当時の好みではないと判断して却下。

余談ですが、戦後航空機による日米間の航空路が開設されて日本航空はそれにDC6Bを投入したそうですが、そのときの座席はアルミの足がむき出しということはなく木目調の素材で隠されていたという話をどこかで聞いたことがあります。いまでこそコンピューターの筐体でアルミの固まりから削り出されたものが使われてそれが美しいと評価される時代ですが、戦前はそんなことはなかったのでしょうね。

次に茶ですが、マホガニーなどの木材の表現と考えました。これはなかなかいい感じですので、捨て難い。
黒は、教会のステンドグラスや鉄の表面が酸化して黒光りしたものの表現と考えましたが、これはあまりきれいでない。
金は真鍮です。

当時の船でどんな素材が一般的に使われているかわかりませんが、真鍮なんかが妥当なところかなと思いました。描いて窓に貼ってみた感じも金が一番しっくりしますので、ここは当造船所の経営者であり工場長であり作業員であり調達係であり・・の私の判断で金にしました。

浅田次郎の『シェラザード』でも、彌勒丸の真鍮の手すりを軍に供出するように命じられたのを宮様のとりなしで撤去、供出を中止させたという下りがあり、当時の船のインテリアの部材はそんな感じで、磨き上げられて金色に光った真鍮だったのではないかと想像を羽ばたかせてみました。

写真は残念ながらきれいに写っていないのですがこんな感じになります。


電子顕微鏡で分子を撮影した写真のようにぼやけてしまってなんだかよくわかりませんが、真鍮の桟が描かれています。

2011年1月20日木曜日

NDL Potsdam (9) - 窓の桟はどんな色?

最近本業が忙しく造船業はなかなか捗りませんが、それでも少しずつ作業を進めています。一度にやろうとすると時間が取れず結局挫折してしまいますが、パーツ一つでも切り出せれば良しと考えていると割と仕事が進みますね。本業の息抜きにちょこちょこ作業しています。

さて工程はステップ3に入っています。いくつかの肋材を切り出したのですが、その中に一つ、ドアがついているものがあります。


このドアには四角い窓がついているのですが、その窓はブルーの塗装で表現されています。これが気に入らないので窓の部分を切り抜いて透明シートを貼ろうと思うのですが、問題が一つ浮上しました。

窓の桟は、現在は黒のラインで表現されているのですが、これ本当はどんな色なんでしょう。

桟の部分は透明シートにペンでラインを引いて表現しようと考えているのですが、はたしてどんな色で塗ったらいいんでしょうね。この桟が実際にはどんな素材でできていて、塗装されているのかどうか分かれば問題解決なのですが、あいにくそこまで詳しい資料もありませんので想像でやるしかないのですが、でも黒いラインというのも芸がないし、悩みます。

実際は真鍮でできていて金色に輝いているんじゃないかと思うのですが、どなたかこの船のこの部分についてご存知の方、他の船の例をご存知の方いらっしゃいませんか。ヒントなりとも頂ければ有り難いのですが。

このパーツは、後部のハウスの壁を構成するものです。

2011年1月15日土曜日

NDL Potsdam (8) - 第2ステップ終了

最近本業の方が忙しく、模型作りは捗りません。

今日、ようやく第二工程がほぼ終了しました。


現在、横方向の肋材をキールに交差させ、底板に接着し、糊が乾くのを待っている状態です。手前にあるのは部材リストによれば
Längespant
だそうです。縦方向の肋材とでも言うのでしょうか。船体のサイドに前後に組み込みます。サイドキールを水平に寝かせたような部材です。

これを付けると第二工程が終わるのですが、差し込む部材の都合上、どうしても第一工程で組み立てた船首部分と接着しなければならないことがわかりました。二つを接続しただけでも大分大きなものになりますので船体を載せる板を調達しなければなりません。

ところでこの船体の真ん中の部分ですが、組み立てていてわかったことがあります。それはこの船の舷側は、垂直に立っているというわけではない、ということです。船首の部分と真ん中の部分の接続部、部材で言うと部材番号13の肋材の付近で垂直なっていますが、その後ろは肋材が上にいくほど幅が絞られています。この事実は写真で見てもまず見つけることができません。模型を作っているとこういうところがわかって面白いですね。

次回から第三工程に入ります。

2011年1月9日日曜日

NDL Potsdam (7) - ストリンガーとサイドキールを付けて第1ステップ完了

この250分の1のモデルは、400分の1モデルのStefan Batoryと違って船体の構造も本格的です。

これまでに切り出した部材の他に、今日は船首部分を水辺に前後に通じる「船首縦通材(ストリンガー)と副キールとでも言いましょうか、サイドキールを組み込んで組立説明書の第1ステップを完了させます。

船首縦通材(ストリンガー)

サイドキール
船首縦通材はドイツ語でVorschiffsstringer、サイドキールはSeitenträgerと部材リストに記載されています。

これらを既に切り出してある肋材とキールの切り込みにはめ込んで接着して行きます。

下の写真は既に肋材が接着された状態ですが、肋材を底板に接着するとき、底板にナットの重りを載せて歪みを防ぎながら作業しました。


そこにストリンガーを組み込むと肋材とキールの垂直交差が確保されるようになります。

そして初めての甲板(Bデッキ)をキールと肋材の上に載せて前後の肋材と接着します。接着にあたっては手で押さえて糊が乾くのを待つのではなく、ここでもナットの重りを動員して押さえつけます。このモデルでは甲板の湾曲も再現されていますので、肋材のエッジのカーブに合わせて甲板を接着するのにもこの重りは重宝します。

1時間ほど重りを載せておくと甲板はきれいにしっかりと固定され船体の強度も増しました。これで組立説明書の第1のステップがほぼ終了しました。船首、中間部、船尾部と一挙に接続してから組み立てていく方法もあるのですが、当造船所ではしばらく三つに分けて組み立てていきます。その方が作業がやりやすいので。



ところでこのような船の構造、躯体部分は、モデル製作者によってはもっと徹底的に糊付けする人もいるようですが、私は最低限に留めました。そのため、この部分かなりの強度が出たとはいうもののまだフレキシブルです。不安が残りますが、この後上部の甲板、そして舷側もつきますので強度はそれで十分になるのではないかと判断したからです。初めから、あまりがっしりと作ってしまうと歪みが出たときに修正が利かなくなってしまうということもあります。

2011年1月8日土曜日

ナットを重りとして使う

さて今回は工具の紹介です。

タイトルにもあるようにナット(雌ねじ)を重りとして使います。


重りは部品同士を糊付けするとき、接着面がしっかりとくっつくように、またその接着によって別の部品が歪まないようにするために使います。

例えば下の写真のように。


これは製作中のポツダム号の船首部分なのですが、肋材、桁材の接着によって底板が歪まないように重しにしています。

今回使ったナットは、ドイツのBauhaus(バウハウス)というホームセンターで購入したものですが、DIN938が100個入って3.90ユーロでした。かなりの重さがあり今回の製作にはこれで十分でしょう。

紙モデル製作者は各人、いろいろな重りを使っていますが、ナットは大きさもちょうど良く(いろいろな大きさのものを選べる)、バランスよく配置できるので便利です。糊が乾くまでずっと指で押さえているというのも根性と根気、指先の制御能力が十分ある人にはいいのですが、凡人には無理。前回製作したStefan Batoryは、指だけで糊が乾くまで押さえていましたが、小さなモデルでも部材が波をうってしまった部分もありました。

重りとしては何も、使いもしないナットなんかを買わずとも、ユーロセントのコインをたくさん使えば、お金を無駄に支出しなくて済みますので、キャッシュフローにはとても良いのですが、どうもお金を道具として使うのはちょっと気が引けます。

NDL Potsdam (6) - 底板とキールの接着、ドアと丸窓の一工夫

現在造っている船、NDL Potsdamと表現してきましたが、これはドイツ語が読める人、ドイツの船にちょっとは詳しいぞ、という人にしかわからないかもしれませんね。すべてを日本語で表現すると「北ドイツロイド・ポツダム」となります。

「北ドイツロイド」というのは、NDLと省略されているNorddeutscher Lloydのことですが、ブレーメンに本社を置いていた船舶会社です。現在でもハパグ・ロイドという会社がありますが、この北ドイツロイドとハパグが合併してできた会社です。クルーズ客船ファンならオイローパ、ブレーメン、ハンゼアティック、コロンブスなんていう客船をご存知でしょう。

北ドイツロイドもハパグも戦前の二大船舶会社ですが、それならなぜ「ドイツ」と言わずに「北ドイツ」というのかというと、まだドイツが統一される前、といっても壁の崩壊に続く東西ドイツ統一ではなく、1871年のドイツ帝国による統一以前に存在した「北ドイツ連邦」に因んで名付けられた名前だからです(参考:Dirk J. Peters (hrsg.), Der Norddeutsche Lloyd - Von Bremen in die Welt "Global Player" der Schifffahrtsgeschichte, Bremen 2007)。

そして「ポツダム」とはこの船の名前ですが、ベルリンに隣接するプロイセン王国の王宮都市ポツダムに因んでいます。姉妹船がシャルンホルストとグナイゼナウですから、プロイセン王国を連想する名前が、この三姉妹船に付けられているということになります。

これからはポツダム丸、いやポツダム号と呼ぶことにしましょうか。

前置きが長くなりましたが、今回はポツダム号での最初の本格的な接着です。既に切り出した底板とキールを接着します。キールが曲がらないように物差しにクリップで留めて少しずつ糊付けして行きます。いっぺんに接着してしまわないのは、あまり大きな部分を一度に接着すると糊の湿気で紙が歪む可能性があるからです。まだどれくらい歪むか、感覚がつかめていませんので用心のため少しずつ接着していくことにしました。


これで断面が逆T字形になりましたが、これだけでもかなり強度が出ますね。これでキールは横方向には歪まなくなりましたし、底板は縦方向に曲がらなくなりました。

そしてここに切り出した肋材を接着して行くのですが、今はまだ切り込みにはめ込んで載せてあるだけです。切り出しに間違いがないか確認してから、やはり少しずつ接着して行きます。



船体の工作ですから、しばらく大味なモノトーンな作業が続きますが、そんな中、ちょっとだけ工夫してみました。下の写真は肋材の一つ、パーツ番号19をクローズアップしたところです。


壁に扉が6つついています。中央二つは水密ハッチなのでしょうか。このドアは、別にドアを切り出し壁に貼付けてあります。こうすると立体感が出ます。写真ではほとんどわかりませんが、ドアノブもちゃんと作ってあるんですよ。

そして他の木製と思われるドアは丸窓を穿ってStefan Batoryでガラス窓に使ったのと同じ材料、封筒の透明窓を貼っておきました。この部分は上部甲板に隠れてしまう部分で、ほとんど見えなくなってしまいますが、製作者しか知らない秘めたる劇場です。

2011年1月6日木曜日

NDL Potsdam (5) - 肋材切り出し

昨日は底板、今日は肋材(ろくざい)を切り出しました。肋材はドイツ語では
Spant
と言います。

昨日、喫水線がサイドのラインが船首部分で大きく内側に入っているということを書きましたが、それに応じて肋材のサイドのラインも甲板と喫水線の間が大きく内側に抉れています。

船首部分の肋材
好みにもよりますが美しいラインです。船の横断面がわかるとその船がどんな形なのか想像がつきますね。側面からの写真を見ただけではわからない部分です。

左列の最も下の部材には、上の方に扉があります。この部分は別の部品を切り出して貼付けてあります。把っ手の部分は、手すり用の部材を短く切って貼付けました。写真を撮りましたがほとんどわからないので掲載しませんでした。把っ手の部分は、実際にはどんな素材でできているのでしょうか。真鍮だとしたら金色に塗るといいかもしれません。この部分は、甲板の下に隠れてしまってまず外からは見えない部分なのですが、だからこそ自分の考えで冒険のできる場所です。

2011年1月5日水曜日

NDL Potsdam (4) - 底板

今日は底板を切り出しました。底板はドイツ語では
Grundplatte
といいます。基盤、土台、ベースプレートなどという訳も辞書には載っていますが、造船用語ではないと思います。敢えて言えば模型造船用語とでも言えるでしょうか。

私の作っているモデルはウォーターラインモデルといって船が水に浮かんだときの水面上の部分を作るものです。ですから喫水線、つまり船体と水面が交わる部分にこの板が必要になりますが、実際の船にはこういう部品はありません。

底板

実際にはないものですが、この形を見ると船体がどんな形をしているのかよくわかります。

ポツダムができたのは1930年代半ばのことですが、その時代の船、特に客船としては先が鋭く尖っていてサイドのラインが内側に大きく入り込んでいます。戦艦大和のプラモデルを造ったことのある方ならわかると思いますが、軍艦のようなフォルムです。

この模型では水面下はわかりませんが、実物はWulstbug(球状船首=バルバス・バウ)が採用されています。これはやはり戦艦大和の船首の、顎のように出っ張った部分。ポツダムの場合、あれほど出っ張ってはいませんが、客船で比較するとフランス号とよく似た形状です(参考:ふねきちさんのプログ)。造波抵抗を減らす働きがあり、高速化、省燃費に効果が期待できます。

これはこの船の特徴になっていますが水の抵抗を小さくし高速での航行を狙ったものでしょう。しかし建造には費用がかかりますし、内部の空間、船内のスペースを犠牲にしてしまいます。

調べたところによるとポツダムの姉妹船であるシャルンホルストとグナイゼナウにはこのような設計は採用されなかったようです。後者二隻に採用されたのはMaier-Bugformといって当時一般的な船首の形状でした。底板を作るとサイドのラインはほとんど中に入り込んでおらず、V形にになっているだけです(P. Kuckuk, Die Ostasienschnelldampfer - Scharnhorst, Potsdam und Gneisenau des Norddeutschen Lloyd, Bereme, 2005, S.114-115)。

姉妹船の中で、船体からしてポツダムとその他二隻は大きく違うのですが、それでも「姉妹船」と呼べるんでしょうか。いずれにしろポツダムを参考にシャルンホルストも一緒に作るという私の構想はひとまず棚上げすることになりました。

一見するとポツダムの方が他の二隻より保守的な印象があるのですが、実はかなり先進的な流線型、船形を採用していたんですね。

話を模型の方に戻しますが、底板は厚紙とはいえ、ぺらぺらで強度がありません。それに前回切り出したキールを貼り付けることでお互いに形状が安定して強度が出ます。

NDL Potsdam (3) - 最初の切り出し

当造船所では、今年最初の部品の切り出しが行われました。初切り出しとでも呼ぶべきでしょうか。

最初の部品は、
Mittelträger, vorne
中央の桁(前方)、
つまりキールの前方部ということです。


底板と接合される部分は左右に折り畳み、ここがのりしろになります。こうやって紙を折ると強度が出て折れにくく、また直線を保ち安くなります。

前回のStefan Batoryは1/400モデルでしたので、強度はそれほど気にしなくても済むのですが、今回は1/250モデルなので強度を出す工夫がいろいろなところに見られます。骨組みになる部分はもっと厚い茶ボール紙や段ボールや作って簡単に済ませようかとも思ったのですが、キットがどんな工夫をしているのか観察するのも面白いので、キットの指示通りに作ります。

このキール、よく見ると上から半ばまで切り込みが入っていますが、ここには左右につながるリブの板が入ります。こういうのも前回には見られなかった工夫です。

これだけ切り出すのに30分以上かかりました。この冬はずっとこれにかかりきりになりそうです。

2011年1月2日日曜日

NDL Potsdam (2) - cfm NDL Potsdam ペーパークラフトキット概要

今回製作するNDL(北ドイツロイド)のPotsdam(ポツダム)のキットは、前回のStefan Batoryとは違いドイツ製です。組み立て説明、解説等全てドイツ語です。

構成は1〜2ページが組み立てのための一般説明、3〜12ページが部品リスト、13〜32ページがイラストによる組み立て手順の説明、33〜65ページが切り抜き部品になっています。

一般説明では記号や使用用具の簡単な説明があります。ドイツ人の解説にしては短いのですが、簡潔で要を得ています。

ペーパークラフト組み立てのための一般説明

部品リスト一覧は、表形式で743種の部品全ての名称が載っています。作者のReinhold Hahn氏は、造船業に携わっていたそうですのでので形を再現するだけでなく、その部材の名前も挙げることができたのでしょう。私Berlinerの職業は翻訳業なのですが、辞書には載っていない名も無き部材の名称を翻訳するのは一苦労です。部材の名称を挙げ、名付けられるというのは専門家でなければ難しいこと。この一覧は、モデルではありますが、実物との対比ができるだけに、造船分野のドイツ語理解を深めるための貴重な資料になりそうです。

部材リスト
全ての部品が番号、名称、数でリストアップされている。

組み立て手順の説明は、全てイラストで説明されています。これに10ページあまりを割いていますが、これならドイツ語がわからない人も迷わずに組み立てられるでしょう。
Stefan Batoryを作った時、イラストに代わるものとして、JSCというポーランドの出版社が提供するポーランド語と英語の組立説明書がありました。英語はポーランド語からの翻訳だったのでしょうが、どうもおかしな翻訳も多くそれを理解するのには苦労させられました。このキットでは組み立てに関してはイラストが主体ですので、そういう苦労はしなくて済みそうです。

そして部材リストの後には実際の部品が続きます。印刷を見ると、驚くべきことに、手書きのものを製版しています。着色済ですが概形は手書き故に、コンピューター制御で描かれたものとは違って精密さには欠けますが、なかなかいい味が出ています。

部材の一例
手描きのものを製版

使用されている厚紙は全て同じ厚さです。質の良い紙が使われていますが、船体には強度不足のようで、強度を出すために工法での工夫が見られます。紙とは言え、造船の知識が投入されているようですね。

このキットのお値段ですが定価で28ユーロ。私は送料込みで34ユーロで購入しました。趣味に金銭云々は野暮ですが、このお値段、ペーパークラフトを趣味にするドイツ人の一部にはかなり高額と感じられるようです。たしかにキットの中では中の上くらいの価格レベルですが、これを高いと判断するか、安いと判断するかは個人の懐具合もさることながら、どれだけ楽しめるかということにもかかってくるでしょう。私だったら最低でも3ヶ月、ひょっとしたら半年は楽しめそうです。作るのが遅いだけで自慢にもなりませんが・・。